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投資家に問うしかない!のリチャードが語る 南アジアの債務問題 1997年危機再来の懸念か

1997年、タイ・バーツの切り下げによって、世界市場の大暴落が起こりました。歴史は繰り返す、と言いますが、今まさにそれが懸念されています。

パキスタンでは通貨が暴落し、パキスタン政府は債務不履行を防ぐために必死で救済措置を求めています。バングラデシュは国際通貨基金に先行融資を要請しています。スリランカは政府が崩壊し、国際的な債務不履行に陥ってしまいました。貿易赤字が急増しているインドでも、インド・ルピーが記録的な安値に落ち込みました。この南アジアの経済・政治不安は、25年前のアジア通貨危機を彷彿とさせるものがあります。

1997年7月にタイが為替投機に対処するためにバーツを切り下げたとき、それはタイだけが関係する事のようにも見えましたが、その影響はあっという間にインドネシア、マレーシア、そして韓国へと、まるでウイルスのように広がりました。1998年8月には、債務不履行に陥ったラテンアメリカやロシアを含む新興国市場の株式や債券から投資家が撤退しました。パニックに陥った貸し手は早期返済を要求しました。その1ヵ月後、ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメントがロシアとアジアの証券に対して行った高レバレッジの賭けは失敗に終わってしまいました。

こんなことがまた起こるのでしょうか。イスラマバードに拠点を置き、金融包摂を専門とするNPO法人カランダッシュ・パキスタンは、同様の事態がまた起こるとしています。過去10年間、南アジア諸国は「低コストのドル融資で大宴会を開き、贅沢品や虚栄心の強いプロジェクトを支援してきた」というのです。まさに今の南アジアは 1997年の危機が起こっても仕方ないような状況なのです。

今春、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ対策として利上げをエスカレートさせたとき、南アジアでもインフレが進行し、ドミノ倒しのように次々とマーケットが悪化しました。外貨準備高が減少し、通貨が下落し、イージー・マネーが枯渇したのです。

続くインフレや政治的不安の拡大

この危機が長引けば、世界で最も急速に成長している主要経済国であるインドと、世界人口の4分の1を擁する地域の経済活動が妨げられ、アマゾンやウォールマートなどの、この地域の将来を見込んで大きな投資をした企業は拡大方針を変え、また、これらの企業に続いて南アジアに投資したいという企業が減少するでしょう。

この影響の拡大は今のところ止まっているように見えますが、1997年に起きたアジア諸国のいわゆる「経済の奇跡」には、過剰な公的・私的債務、脆弱な銀行、投機的な海外投資といった、現在ではあまり顕著でない弱点が隠されていたというのが一つの理由です。また、南アジア諸国は、1990年代に近隣諸国と比較して、外国に対する債務が少ないといった特徴があります。これは、経済資金を調達するために、ドルよりも現地通貨でより多く借りたためです。

IMFもまた、最も荒廃した国々との様々なレベルの信用交渉に入ることで、寛容になっているようにも見えます。前回の危機の際には、世界的な貸し手は苦境にある国々に厳しい条件を課しましたが、その失敗を受け、専門家によると、今回も同じ戦略をとる可能性は低いといわれています。

とはいえ、警告の兆候は多々あります。燃料や食料の不足、そしてロシアのウクライナ戦争によるインフレの高まりは、この地域に大きな影響を与え、経済が疲弊し始めています。パキスタンやスリランカでは政治的な混乱が起きています。

政府指導による停電も起きています。パキスタンで1日最大12時間、バングラデシュで5時間続いたといわれています。ダッカから約90マイル離れたバングラデシュ南部マドゥハリの大学生シャウォン・モンドールさん(18)は、「時々、夜中に電気が消えるんです」と話す。昼間の計画停電に加えて、こういった自体も起きており、学業に集中するのが難しくなったといいます。

ワシントンの国際金融研究所によると、商品を輸出し、今年初めのドル高で利益を得た国でも、資本流出が広がっているといいます。パキスタンの通貨ルピーは、過去最低を記録し、IIFが監視している国の中で最も状況が悪いといえます。国債の格付けはかなり低く、ジャンクに近い状態となっています。

IMFによる救済を受けるため、新政権は短期間にディーゼル価格を約100%、電力コストを約50%引き上げました。また、資金を増やすため、小売業に課税したことで、全国的なデモが起こりました。ミフタ・イスマイル財務大臣によると、パンデミックが広がり始めた頃、多国間組織や他の国々では、世界経済への懸念が強かったといいます。予算削減と輸入需要の減少によって、パキスタンはなんとかこの嵐を乗り切ろうとしています。

安定した信用格付けを持ち、多くのエコノミストから、いわゆるフロンティア経済の新星と見なされているバングラデシュでは、燃料不足が不安感を広げ、輸入コストの膨張を引き起こしています。輸出の80%以上を占める衣料品産業は、国内でのエネルギー不足と国際的な受注の減速に悩まされている。ダッカの当局者は、バングラデシュがIMFに要請した援助は予防的なものであり、パキスタンやスリランカが要請した救済資金と比較すべきではないと主張しています。

最も深刻なのはスリランカです。燃料不足や政府の管理不行き届きに対する抗議が広まり、政府転覆につながった。さらに、債務残高を減らすための債権者合意など、新たなIMF支援の要件もまだ満たしていない。モーターリンク・ホールディングスによると、2年前に15万〜20万スリランカルピー(414〜552ドル)だったエンジンオイル1樽が、今では100万円になっています。塗料の値段は900%近くも上がっています。物価の変動が激しすぎて、ビジネスの実情としては、見積りを作成しても3日以上有効とされないそうです。

コロンボのパリタ・コホナ駐中国大使は7月15日、スリランカが中国と最大40億ドルの援助について交渉していると述べました。これには今年返済期限の到来する10億ドルの中国からの融資のリストラが含まれているといいます。同氏は、スリランカの対外債務の10%が中国に債務があると推定しています。

期待されるインドの役割・かつての中国となれるか

25年前に中国が東アジアに対して行ったように、インドが安定化勢力として機能することが期待されています。インドの外貨準備高は、スリランカの危機を免れた前回の危機以来、20倍にも拡大しています。また、巨大な消費市場に対する投資家の期待から、株式市場は高騰しています。しかし、ルピーの対ドル相場が下落し、FRBが引き締めに転じたことで、ルピー安による輸入物価の上昇で資金繰りが厳しくなりました。

投資家は今年、国内株式から290億ドル以上を引き揚げ、中央銀行であるインド準備銀行は約6000億ドルの軍資金の一部を活用せざるを得なくなりましたが、それでも約9カ月分の輸入代金を支払うには十分な資金があります。インフレ率を下げるため、RBIは金利を引き上げ、さらに引き締めることが予想されます。シャクシカンタ・ダス総裁は、ソフトランディングを約束しています。15億人以上の人口を抱えるこの国が、南アジアの危機を収束させてくれることを祈っています。

リチャード・ケイン

アジア・ウェルス・グループ・ホールディングス、マイヤー・グループ、マイヤー・アセット・マネジメント、マイヤー・インターナショナル・リミテッドのCEO。

数十年にわたって資産運用計画に従事。カナダのケベック州モントリオールで生まれ、その後、日本の東京に15年以上移り住み、現在はタイのバンコク在住。マイヤーグループを経営し、ロンドン、英国証券取引所上場金融ホールディングスのアジアウェルスグループホールディングスの高信頼性CEO、およびマイヤーグループ会社のマネージングディレクターを務める一方、富裕層の後継者育成を専門に行う複数の組織のマネージングディレクターを歴任。

ポートフォリオ、債券、投資信託、オフショア投資、老後のための投資など、あらゆる分野で世界中の顧客と関わってきた経験を活かし、正しい方法で投資し、現金を保護するお手伝いをします。

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