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日本のインフレについて真剣に考えるときが来た

歴史的なインフレ率

日本のコア・インフレ率は今年12月に41年ぶりの高水準に達しました。他方、日本銀行は、1月18日、金利の据え置きを決定しました。この日銀の金融政策は、正しい決断といえるのでしょうか。

日本では、インフレ率は、ヘッドライン・インフレ率(生鮮食品を除く)とコア・インフレ率(生鮮食品を除く)の双方が前年同月比4.0%増となり、9ヶ月連続で日銀の目標値である2%を上回りました。

この物価の値上がりの理由は、大方エネルギー価格の高騰が原因と思われます。エネルギー価格は前年同月比15.2%増となっています。エネルギーと生鮮食品を除いたコア・インフレ率は前年同月比3.0%増と、1991年8月以来の高い上昇率を記録しました。

モノとサービスのインフレ率に違い

注意深く分析をしてみると、面白いことがわかりました。モノのインフレ率と、サービスのインフレ率に大きな差があるのです。モノは前年比7.1%、サービスは同0.8%となっていました。これは、モノのインフレ率にはエネルギーの価格高騰が影響しているということを意味しています。

もしくは、現在の通貨インフレの高騰が、供給サイドを大きく反映しているということかもしれません。現在のモノのインフレ率の急上昇は、主に供給サイドの事情を反映しているということも考えられます。

実は、日銀もこの見解を持っているように思います。最近の報道では、日本銀行は、インフレ率は短期的に比較的高くなると予想しているようです。輸入品の物価上昇に伴うコスト増が消費者物価に転嫁されるため、短期的にはインフレ率が比較的高くなるはずだと考えている、ということです。

日本銀行の金融政策がもたらすもの

金融政策が供給サイドに直接与える影響は通常、限定的です。そうであれば、日銀が緩和的な政策を維持することは正しい、もしくは理にかなったものだと思われます。しかし、日銀の黒田総裁は、1月18日、「日銀はかなり速いペースで賃金が上昇すると予想しており、これはインフレ基調にとって重要な進展と考えている」というような趣旨の、比較的タカ派的な発言をしたことが気になるところです。これにより、消費者の購買力を押し上げ、需要主導のインフレが起こる可能性はあります。そうすると、日銀が利上げを開始する可能性もあるでしょう。

日本は歴史から学ばなければならない

1989年を振り返ってみましょう。当時、1989年、日銀は大幅な金融引き締めを行いました。翌年、当時の日銀総裁、衛藤靖が行った冒頭演説から、現在の日本の経済状況との類似点を見ることができるような気がします。

衛藤総裁は、輸入コストの上昇、円安、賃金の上昇を理由に利上げが必要だと判断しました。注目すべきは、この時期と賃金上昇率です。黒田総裁が必要な利上げペースと指摘したのは、3%超の賃金上昇率を維持した時期でした。

1989年当時から現在までで、唯一欠落している要素は賃金の上昇です。最新のデータでは、12ヶ月間の平均賃金は前年同期比2.45%増。賃金上昇は、4月1日の日本の会計年度開始前後ペースアップすることが予想されています。2022年に見られた勢いを継続し、金融政策正常化の扉を開くことができるのでしょうか。

金融引き締めはまだ最終的な結論ではありません。1989年に日銀が利上げを開始したとき、日銀は、「失われた10年」と呼ばれる10年に及ぶ経済停滞と物価デフレに直面していました。今もこれに似たような、非常に難しい状況にあることは間違いありません。

失われた10年の再来は避けるべき

MFは、「失われた10年」は、資産価格の崩壊に適正に対処しなかったために起こったと指摘しています。現在の地価が低い水準で安定していることはある意味心強いことで、これによって、政策の引き締めが直接的に「失われた10年」を引き起こす可能性が低くなると思います。

1989年5月から1990年8月までの累積利上げにより、政策金利は2.5%から6.0%に上昇しましたが、これは、経済活動や日本の金融システムに大きな負担となりました。ちなみに現在の政策金利は-0.1%です。日銀が実際に利上げに踏み切ったとしても、1990年のピークに近い水準に達することはないとは思いますが、目が離せない状況です。

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